「新規事業を提案し、実現させたい」
「大きなプロジェクトに関わりたい」
「いつかは起業して社長になりたい」

大きな夢・目標をもって日々の仕事に取り組んでいるビジネスパーソンはたくさんいます。未知の世界へ挑戦したいという熱意をもって、日々勉強に励んでいることでしょう。

独立して会社を起こしたり、新規事業を発足させたりするのは、やりがいのあるチャレンジです。しかし、何より重要なのは、立ち上げた会社・プロジェクトを推進させ、成果が出せるよう成長させることではないでしょうか。

新しい事業を起こして推進するためには何が必要なのか、大きなプロジェクトを管理・進捗させるにはどういう点に気を付ければいいのか…起業家・経営者の多くを悩ませる、本質的な課題です。

組織の成長や事業推進のポイントを知るべく、1998年に創業した福岡の通販会社・ハーブ健康本舗の代表にインタビューを敢行!会社を起こした当時のエピソードから、起業やプロジェクト管理の秘訣を聞いてみました。

代表・永松靖浩
ハーブ健康本舗の創始者。1998年の創業以降、自然美容健康茶「モリモリスリム」シリーズをはじめ、美と健康をサポートするオリジナルの健康食品を開発・販売。直近は化粧品事業や海外市場の拡大に注力しつつ、社内体制の強化として、マーケッターや部署リーダーの育成に力を入れている。

事業推進に必要な「経営感覚」とは?社内起業制度への想い

― 今回は「起業」「新規事業」をテーマにお話を聞かせてください!そういえば以前に実施したインタビューで、社内で新規事業を推進していく構想についてお話されていましたよね?

以前の記事より抜粋

永松
実は4〜5年前から、メンバー主体で事業を立ち上げ成長させていく、社内起業制度を実施しようと、準備を進めていたんです。前段階として、直近では部長育成プログラムの充実化・組織体系の見直しを進めており、社内体制がだいぶ整ってきました。

次世代の事業部長や社長を育てていく一環として、この社内起業制度を実現し、社内から事業の立ち上げに挑戦するメンバーを輩出できればと考えています。

― 新たな事業を立ち上げる経験を通じて、事業部長ひいては社長・経営者としてのスキルを磨ける制度なんですね。

永松
部長以上の役職で仕事をするには、いかに経営者感覚を自分のものにできるかが鍵を握ります。いま、ハーブ健康本舗にはさまざまな部門がありますよね。

国内のWebに関する事業・テレビ媒体を主軸としたオフライン事業・専売品を活用したECモール事業・ドラッグストア展開をはじめとする卸事業・中国を皮切りにグローバルな拡がりをみせる海外事業…。

これらの部門を運営するということは、事業のビジョンを見据えた目標設定や、価値を届ける戦略・戦術の設計販促していける組織の構築、費用対効果に見合った財務コントロールが必要です。

事業を任せる部長はまさに「経営者」であり、経営者感覚を養って仕事にのぞんでもらいたいと考えています。

― 「起業」というと新しい商品やサービスをつくって販売することに目が行きがちですが、組織や財務にも責任をもち仕事に取り組まなければならない…お話を聴きながら、経営者感覚の本質は、事業のすべてに責任をもてるだけのスキルや覚悟なのかなと感じました。

永松
そうですね。一般的に、「販売戦略」「組織構築」「財務」の3つは、経営の三大要素と呼ばれています。この3つがひとつでも崩れたらおしまいです。バランス感覚をもってコントロールしなければならない。

部署の責任者の皆さんには定期的にこの話を伝えていて、自部署の状態が現在どうであるか、どのように変えていくべきか、考える時間をつくってもらっています。

― すごく大事なことだと理解している一方で、とはいえすごく難しいことだとも感じていまして…。実際問題どのようにスキルを磨いていくものなのでしょうか?

永松
実際に経験しないとわからない側面はあると思います。社内起業制度の実装もまさにこの考えがベースにあり、自分で事業を立ち上げ育てていく経験を通じて成長を支援する狙いがあるんです。

もちろん、座学として経営者の勉強をしてもらうことも大切です。自ら積極的に学びつつ、さらにやる気のある人には制度を利用してもらい、自分の責任で事業を運用する経験を通じて、立派な経営者になってほしいですね!

組織を成長させるには?通販会社・ハーブ健康本舗の組織構築の変遷

― 今回のインタビューに先立ち、4年前に公開した代表メッセージの記事を読み返してみたんです。社長が贈答用ラーメンで起業されたことを話されていて。事業のスタートは健康茶でもサプリでもないんだと、驚いたのを思い出しました。

永松
懐かしいですね!自分で商品を作って世の中に届けたいという想いで動いていたので、当初は商品のジャンルにこだわりがありませんでした。よいものが出来たらお客さまに届けて、喜んでほしいという気持ちが強かったですね。

― 贈答用ラーメンから事業運営をスタートした永松社長は、偶然目にしたハーブティー商品の広告がきっかけで、2001年に自然美容健康茶モリモリスリムの前身商品である『痩美王妃(そうびおうひ)』を開発します。

― 痩美王妃の販売が契機となり、翌2002年に有限会社としてハーブ健康本舗が設立されました。そういえば、なぜ“ハーブ健康本舗”という名前なのでしょう?社名の由来を伺ったことがなかったなと思い…。

永松
直感的でわかりやすい名前がよいと思ったんですね。お客さまに、ハーブという自然素材を使った健康によいものを売っている会社だと伝わるよう、“ハーブ”という名前を入れました。

また、わたしひとりでスタートした会社なので、実績がない状態で仕事を進めなければならず、できるだけ信頼感のある会社名にしたかったという意図があります。“健康本舗”というと、ちょっと古臭さを感じる人もいると思うのですが、老舗感が出るでしょう?実際、取引先に「相当昔からやってらっしゃるんですよね?」と言われたこともあるんですよ(笑)。

― 社名にそんな意図があったとは知りませんでした…。開業したばかりの頃は、ほとんど社長ひとりで事業のすべてを進めていかないといけなかったのですよね?

永松
最初はひとりでやっていましたね。なんとかやれていたものの、月の売上が伸びてくるにつれ、ひとりでなんでもこなすのが現実的に厳しくなってきました。忙し過ぎて寝ている暇がなくなったとき、このままではまずいと思って、事務・経理の担当者とデザイナーを雇いはじめたんです。

事業形態としては卸販売がメインだったので、顧客対応に人手が不要な分、少数精鋭の人数規模で事業を進めていました。人員を増やして本格的に組織をつくりはじめたのは、卸事業から直販メインでの展開に切り替えたタイミングです。お客さま対応をするコールセンターやシステム、在庫や出荷の管理担当者が必要になり、本格的に人数規模を拡大しました。

― 直販事業に踏み込んだのが2006年11月で、このときに自然美容健康茶『モリモリスリム』が誕生しました。卸事業とは違った販路での挑戦となりますが、事業立ち上げ時のエピソードをお伺いしたいです。

永松
モリ事業を立ち上げたときのことは、いまでも印象に残っています。卸事業を長年続けてきましたが、明らかに市場に競争相手が増え続けていましたし、市場の商品寿命がどんどん早まっていたので、半永久的にこの商売を続けるのは難しいなと感じていました。

とはいえ6年近く続けてきた卸事業からの切り替えは、半端ない覚悟が必要でした。大急ぎで商品開発を進めたり、直販サイトを準備したり…。会社のメンバーを養う立場でもあったため、絶対に成功させないといけないプレッシャーは相当のものでした。一切妥協せず根詰めてやったのをよく覚えています。

― いままで努力して積み重ねてきた仕事をガラリと変えることは、相当勇気が必要だと思います。つい「このまま続けても絶対ダメって訳じゃないよね…」と妥協してしまいそうです…。

永松
新しい挑戦に対して切り替えが早いというか、スパッとやめられるのは、自分の強みかもしれません。直販事業は未知の領域でしたので、ゼロイチではじめるのは大変でしたが、気合いを入れて準備を進めたのが功を奏し、よいスタートが切れました。

健康食品や化粧品の業界は特にそうですが、競争相手の数が多く、大手企業がひしめく世界で戦っていく必要があります。後発で参入する会社は、手持ちの材料・資源で戦略をたて、なんとか成果を出さなければならない。事業を立ち上げるときは、絶対に結果を出すという強い覚悟が必要だと思います。

― 「覚悟」という言葉は胸に刺さります。先の話題で出てきた“経営者は事業の成果や組織に責任をもたなければならない”という話にも紐づくと思います。

永松
組織の話をすると、人数規模が増える上で制度をどんどんブラッシュアップする必要が出てきました。

具体的には、10人くらいまでメンバーが増えると、組織として仕事を進める上での人事・評価制度が必要になってきて。このときにつくったビジョン実現型のキャリアアップ制度は、現在の人事制度の根幹になっています。

― ちょうど直近公開した人事・総務の仕事を一日体験する記事でキャリアアップ制度に触れました。中長期的な目標を半期に一度設定し、評価軸を明確にする透明性の高い人事制度だと感じています。

永松
制度を導入する時期は半年ほどずっと悩みながら、ああでもないこうでもないと試行錯誤していました…。仕事の成果と、成果を出すまでのプロセス、そして目指すべき目標を、個人の成長支援にどうリンクさせるか。これも経営者がやるべき仕事として、覚悟と責任をもって取り組まなければなりません。

社員がさらに増え、50人を超えてくると、私ひとりでは現場に目が届かない場面が多くなります。そうなると、次はキャリアアップ制度を軸に、部署を任せられるリーダーを育成する研修づくりや、役職の定義を明確にする取り組みが必要だと考えるようになりました。

部長育成プログラムや社内起業制度の構築を進めているのも、メンバーに部署を任せる段階に突入した現状が背景にあります。

事業を立ち上げる経営者がもつべきスキルやマインドとは

永松
ひとつの事業がずっと成長し続けるとは限りません。グループ全体で、会社全体で成長していくためには、メンバー一人ひとりがプロとして成長し、経営者として仕事に打ち込んでほしいと思います。

― いままでのお話のまとめの意味合いになりますが、インタビューの締めとして、起業したり事業を立ち上げたりするには、どういう人物になればいいのか?言葉にしてみたいと考えております。要素が多く、一言で表すのは難しい話だと思いますが、社長はどうお考えですか?

永松
第一に、やる気があること。経営者として、社長として頑張ってみたいという意欲にあふれていることは大前提だと思います。

自分がやりたくないこと・価値を感じないジャンルで起業することは不可能でしょう。好きなことであることは大前提で、好きなことで理想の状態をつくりあげるだけのマインドやスキルがあるのか、という部分が問われます。

― 「理想の状態をつくりあげるだけのマインドやスキル」というと、たとえばどういうものが挙げられるのでしょうか?

永松
検討している社内起業制度で実装しようとしているのですが、スタンスとして「〇年以内に営業利益〇億円を出してくれれば、会社として事業立ち上げの費用を支援する」と考えているんです。そうすると、もちろん「達成するぞ!」という意気込みや熱意は大事ですが、目標値と期日が決まっている以上逆算して事業を設計する必要が出てきます。

逆算して設計する思考は、経営者としてしっかりと身につけていく必要があります。参入する市場でどのくらいの価格帯が相場なのか。価格相場を踏まえてもやろうとしている事業は現実味があるのか。成長見込みがある有望なマーケットなのか。

目標値から逆算し、客観的データをもとに適格な事業計画を出す必要があります。データを分析したり正しく判断したり…こういった経営者に必要なスキルを、社内起業制度に挑戦する過程で学んでほしいです。

― 参入する市場を見極める…。

永松
成長中の市場に飛び込むか、あるいは成熟しきった分野で、いままでにない斬新な価値を提案するか。チャンスのときに参入して、ピンチのときには行動を変える。これを組織できちんと指示していく必要があります。

市場の大きさと比例して競合の数が多くなるので、ライバルに勝てる売り方・差別化された商品価値の打ち出し方を併せて考えておかないといけません。

よくマーケティングは釣りに例えられますが、釣り場に釣り人が集まれば集まるほど、魚は釣り上げにくくなりますよね。そういう時は「釣り場を変えなきゃ!」と判断して動くわけです。釣りは競合(ほかの釣り人)が見えるから分かりやすいですが、特に通販のマーケティングは競合他社が見えにくい分、判断が難しいですね。

― この的確な判断力が、経営者に求められるスキルなのですね。

永松
熱意があることと、それを達成できるかは根本的に違います。成し遂げるマインドとスキル、どちらも欠けてはいけません。

うまくいかないときに「自分には頑張りが足りないんだ」と、マインドにのみ原因を探す人がいますが、マインドとスキルの必要性を理解し、自分の課題を正しく見極めることが大切です。

― いろいろなお話を聞かせていただきました。最後に、これから起業に挑戦したり、事業を立ち上げようとしたりしている方にメッセージをいただきたいです。何かアドバイスをあげるとしたら、社長なら何を伝えますか?

永松
そうですね、まずは「自分がやりたいこと」「自分ができること」「市場のニーズがあること」の3つを満たす事業をみつけることですかね。それが見つかったら、ライバルに勝てる方法をとことん考え抜くことですね。

また、事業をやりだしたら、何の問題もなくスムーズに立ち上がってうまく行く…ということは絶対にありません。様々な問題が発生し、時には不測の事態が発生して、業績が落ち込むこともあります。しかし、どんなことが起きてもあきらめない心を持ち続け、問題が起きた原因を自分の中に探して、自分の考えや行動を変えて前に進まなければなりません。そんな中で経営者は成長していくものだと思います。

お客様や社員に対して、また、最終結果に責任がある立場ですから、落ち込んでいる暇はありません。あらゆる状況に対してタフであり、有言実行で達成するまでやる。とことんやり抜くぞというモチベーションで挑んでください!

成果を出す強い覚悟で組織づくりを推進!高いマインド&確かなスキルをもった経営者になろう

年商180億円という新たな段階へと挑戦しているハーブ健康本舗。会社を一から立ち上げた代表に、事業を立ち上げたりプロジェクトを成功させたりする秘訣を伺いました。

組織のことを第一に考え、成果を出し続ける強い覚悟をもつ。経営者に求められるハードルの高さを痛感させられた時間でした。

社内育成の一環として起業制度の構築を進めつつ、ハーブ健康本舗では引き続き、新規事業の責任者として活躍したい熱意あるメンバーの採用を進めています。

会社の新しい取り組みについては、改めて本ブログでご紹介させていただきます。

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執筆:住吉泰地(すみよしだいち)
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