「社長になりたい」「独立したい」……そんな風に考えたことはありますか?

会社の事業目的を設定し、実現に向けた戦略を練って、全社員を的確に導く経営者。会社のトップに君臨する存在は、一社員にとっては手が届かない遠い存在であるようにも感じます。「社長になる」「経営者として働く」とは、一体どういうことなのでしょうか。

今回は、ハーブ健康本舗で代表取締役社長を勤める永松に時間をもらい、インタビューを敢行。仕事内容や働く想いについて、率直に伺いました。

永松 靖浩
ハーブ健康本舗の代表取締役社長。大手企業3社での営業職を経て独立。徹底した市場調査、品質にこだわり抜いた商品開発、独学で習得したセールスライティングを武器に健康食品の通信販売を開始。ロングセラー商品の『モリモリスリム』シリーズをはじめ、現在も数多くの新商品を輩出し続ける。宴会でのカラオケが大好き。

「社長の仕事」とは一体何なのか?

― 先日社内で行われた説明会にて「社長の定義」が紹介されました。「プロレベルでマーケティングが出来る人」「会社を永続的に存続・発展させられる人」「すべてに対して法的に責任を負う人」が社長である、との定義でしたが、これについて詳しく伺いたいです。

先日発表された
『社長の定義』

永松
マーケティングは、市場の満たされていない欲求を見つけ、それを満たす商品やサービスを供給し、お客様に手にしていただくこと。そして、お客様をファン化する仕組みと組織をつくり、結果を出すことです。これが社長の大きな仕事のひとつだと考えています。また、会社のビジョンを語り、市場変化をイメージした上で事業の中長期的な成長戦略を可視化するのも大事だと思います。進む方向を会社全体に示しながら、組織を統率し、正しい方向に導くという訳ですね。

― そうすることで、会社は永続的に存続し、発展できるということですね。

永松
最後の法的責任は、全顧客、全社員、全取引先、社会に対して生じます。それぐらいプレッシャーのかかる立場であることを自覚し、自責の念ですべてに取り組む必要があると思います。

― 社長という仕事の定義を理解したところで、実際には永松社長がどのような仕事をされているのか、教えていただきたいです。社長の仕事と聞くと、きっと日々お忙しいのだろうとイメージしています。

永松
たいてい忙しいですが、期末は特に忙しい時期ですね。具体的には、まず決算の業務があります。期内の実績数値を確認し、税理士の先生と相談しながら決算書をつくったり、納税の話を進めたりします。また、この時期には人事評価の仕事もありますね。今期内の各人の取り組みをみて、昇降格の検討をします。加えて、来期の目標や計画設定もやります。

― 先日の150億円達成目標前倒しなども、まさに目標設定の一環ですよね。

永松
事業系の部署に対し、現在の状況と、いまのペースでいくとどの位まで伸長が見込めるかを聞きながら、中長期的なビジョンとすり合わせて決めていきます。150億円の件もそのような流れで決めましたね。各部署、正確な情報共有と判断が出来るようになっていて、最近はスムーズに事が進むように感じています。最終的には、2~3年後の中長期的な目標に沿って、直近1年〜半年で何を取り組むか、具体的に資料化して全社員に発表するために準備をします。

― 会社としての全体目標が決まると、じゃあ全体で達成するために各部どう取り組むか、部署単位の目標に落とし込んでいますよね?

永松
はい、経営企画のスタッフに主体的に動いてもらいながら、全体の目標達成のための部署ごとの定性・定量目標を設定しています。また、業績と別に「業務完遂・拡大目標」というのを設けています。簡単に言うと「自身のスキルアップのための目標」ですね。各部署の責任者の方に、お任せする業務の範囲を完遂し出来ることをもっと増やしてもらうため、会社として身につけてほしいスキル状態を個々人に伝えて、期内でどのように取り組むかを考え、実行してもらっています。ちなみに責任者だけでなく、メンバーの方も自分の部署の責任者とやり取りしながら、業績目標と業務完遂・拡大目標を設定しています。

― おっしゃっていただいた業務以外にも、各種資料の作成や会社承認・社長確認もされているので、なかなか大変そうだと感じました。

永松
確かに、昔は全部紙面上で制作物のチェックや数値実績の確認をしていたので、なかなか時間もかかっていたのですが、最近はWEBツール上でやり取りするワークフローを導入し、ずいぶん進めやすくなりましたよ。効率的な進め方も考えつつ業務にあたっています。

経営者は孤独?普段は言わない社長の本音

― 話題が変わりますが、よく「経営者は孤独」という話を耳にします。確かに経営者と社員とでは立場や視点、考え方が違うので、なんとなく距離を感じたり、社員に言えない悩みがあって本音で話しにくかったりするのかなと思っています。永松社長は実際、ご自身の立場で孤独を感じたりされますか?

永松
孤独…うーん、正直ないですね、意識したことがない。僕は経営者で、皆さんは社員。立場が違いますから、考え方も違うのは理解しています。でもそれがきっかけで「孤独だな」とは思ってはいませんね。一般的な会社だと、社長と社員って距離が遠いと思うんですが、その点うちの会社は比較的風通しの良い会社だと思います。僕の席は4階のフロア内に置いて、ガラス戸にしているんですが、これも話しやすい雰囲気づくりの一環ですね。

スケルトンなので、こんな感じで
会議の様子も丸分かり!

― コミュニケーションの風通しがよくなるよう、工夫をされているのですね。社員との立場の違いによる距離感の課題は、社長の仕事の大変さを示すひとつのポイントだと思っていたのですが、永松社長が感じている会社経営の難しい点、社長として働く上で大変な点って何かありますか?

永松
大変って考えると全部大変になってしまうので、極力「大変だ」って考えないようにしていますね。僕の中では、自己実現とか、やりたいことのために仕事をしているので、楽しく仕事できています。もちろん忙しいのは間違いなく忙しいのですが、人生において長い時間を働くことに費やすので、どうせなら楽しい方が良いと考えています。

― 仕事のスタンスの話を伺いましたが、本質的な話題だと思います。2007年に内閣府によって定められた「ワーク・ライフ・バランス」は、“仕事と生活の調和を実現する”ための取り組みと定義されています。多くの人にとっては、仕事の時間/家庭/趣味の時間のバランスをどうとるか、について議論されることが多いですが、この点が経営者との違いなのかと思います。会社を存続させることが使命である以上、四六時中会社のことを考えるのが当たり前、人生の一部になっている点が根本的な違いなのでしょうか。

永松
僕にとっては当たり前の感覚なんだけど、皆さんから見ると違うのかもしれません。…経営者と社員の違い、という点でちょっと考えたのだけど、時折「もどかしさ」みたいなものを感じることがあります。

― 「もどかしさ」ですか?

永松
今言ってもらったように、経営者は会社を永続的に発展させることが自身の重要な使命であり、3年後のビジョンを常に発信し続けないといけません。また、環境変化がどのように起きているか、情報収集し打ち手を考えて、実行しないといけない。実際に実現していくための組織体制を考えないといけない。でも、いつまでも自分でやっている訳にはいかないと思うのです。僕も人間ですから、永遠に社長として仕事していられる訳ではありません

― おっしゃる通りだと思います。

永松
いつかは皆さんに引継ぎして、皆さんに主体的に運用してもらわないといけない日が来ます。頭では分かっていますが、リスクマネジメントの動きや広告費の使い方を見ていて、「こうしたらもっといいのに!」「何でもっと早く動かないのか!」と、もどかしく感じて、つい口を出してしまうことはあります。

― ここ最近、社長が発信されるメッセージの中で「自走する」というキーワードが増えたように感じています。社員に任せて運用できるようにするには、何を伝えたらいいか…というのを常に考えていらっしゃるのですね。

永松
僕としては社員の皆さんに信頼して仕事を任せ、失敗することも含めて経験させたいと思っています。失敗から学びを得て、より成長できると思いますので、社員の皆さんが経験して出来るようになってほしいと強く想っています。それでも「こうしないといけない」という僕の考えもある中で、手放しに出来ないところもあり、この辺は確かに大変だ、と感じる部分かもしれません。

10年後のビジョンは?2022年の抱負を語る!

― 将来的に自走する組織を目指しつつ、いまは少しずつ社員に仕事を任せ、永松社長しか出来なかった仕事の経験を社員にも積ませようと、日々取り組まれていることを理解しました。最後に、長期的なビジョンについても伺いたいです。先の未来 …例えば10年後など、ハーブ健康本舗はどうなっているイメージでしょうか?

永松
そうですね…段階を追っていくと、まず直近3~5年で、部長やマネージメントクラスの体制をつくりあげ、組織開発や能力開発を進めて、社長である僕がいなくても会社が自動的に成長していく状態をつくりたいと考えています。組織の維持は出来たとしても、成長し続けることが大変なんだよね。

― 組織を成長させ続けるには、何が必要だとお考えですか?

永松
市場環境の変化に敏感な人を養う必要があると考えています。その感覚こそが、社長がやるべき「プロレベルでのマーケティング」に繋がります。マーケティング力に優れたプロ人材が増えたら、会社を事業部化し、複数の柱事業をつくって展開していきたいですね。やる気と実力のある人にお任せしていきたいと考えています。

― 実は、2020年2月に実施した社長インタビューでも「事業部化したい」という話題が出ているんです。でもその時って「こうなれば最高なんだよなぁ…」くらいで、まだ具体的なイメージはなかった。それがすごく具体的なイメージになりつつある部分に変化を感じています。

永松
僕も色々口は出しますが、いまの社員は皆、確実に成長しています。前向きに取り組めば必ず出来るようになるので、そのためのサポートを全力で取り組みたく思います。

― 会社の未来について語っていただきましたが、社長ご自身はいかがでしょう?先日の新年の抱負では『革新』だとおっしゃっていましたが、さらに先の10年後など、社長はどんな風に働いていらっしゃいますか?

永松
引き継ぐ、という話はしましたが、多分僕は10年後も、なんだかんだ言って何か仕事をやってるんだと思います(笑)。お客様に商品やサービスを提供して、レスポンスとして注文やあたたかいお声をいただくまでの一連の流れが楽しいので、ずっと関わっていきたいと思います。好きなことを仕事にした方がよいと考えていますので、10年後も仕事の面白さを共感できる仲間と一緒に働きたいですね。

― お話いただきありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる方に向けて、一言頂戴できますでしょうか?

永松
もしもあなたが、いつか社長になってみたい、経営者として仕事をしたいと考えているなら、ぜひ「周りから信頼される人」を目指してください。一緒に仕事している仲間からの信用を積み上げるにはどうしたらいいか、考えて日々意識してやる。ビジネス上で信頼されることは、友達として信頼されるよりもグレードが高いと思います。明確な目標に向かってチャレンジし続け、失敗したときは真摯に受け止めて、失敗に学び改善する、そして成果を出し続ける。その先に明るい未来が待っているはずです。

おしまいに

あとがきとして、この記事を企画した背景を少しだけ。実は、社内で永松が発信するメッセージの中身が、ここ1~2年ほど前から変わったように感じ、ずっと気になっていたんです。

今まではどちらかというと、“会社はこうあるべき”“こういう価値観をもってほしい”といった趣旨のメッセージが主でした。ですが、ここ1年くらい「自走する」組織や「社員参画型」の組織を目指すような取り組みが増えていたり、話の折に「2,3年後には(自分が)いなくなるかもしれないから…」と発言したりしていました。

この心境の変化は、会社の今後に大きく関わると考え、今回永松に時間をつくってもらい、インタビューを敢行した次第です。

社長は普段何をしているのか、どんなことを考えているのか…永松の話を通じて、あなたはどのように感じられたでしょうか?「いつかは社長になりたい」「独立し、経営者として大きな仕事がしたい」…そんな想いに応えるような、背中を押せる記事になっておりましたら幸いです。

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執筆:住吉泰地(すみよしだいち)
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