会社組織で働く上で直面する課題のひとつに、業務の属人化があります。
属人化は「企業などにおいて、ある業務を特定の人が担当し、その人にしかやり方が分からない状態になることを意味する表現(weblio辞書より)」です。担当者が不在になると業務が回らなくなるリスクがあり、業務のマニュアル化・フォーマット化により標準化する等の対策が取られることが多くあります。
組織が前進するために、業務の属人化に対してどう向き合うか…。今回は、ハーブ健康本舗の社内メンバー3名に集まってもらい、それぞれの考えを語ってもらいました。
★社員紹介★
(画面左)北山
【システム】所属。複雑なシステム設計を駆使し会社の合理化推進を担う。
(画面中央)岩佐
【広告メディア】所属。出稿するWEB媒体の選定や買い付け、広告運用を担当。
(画面右)新徳
【EC企画】所属。海外向けの越境EC販促の責任者を務める。
どんな業務が「属人化」している?
― 議論を進める前に、皆さんが「業務の属人化」に関心をもっている理由を伺ってもよいでしょうか?
新徳
現状どのくらい業務が属人化しているのかを正しく認識し、今後の方針を決めることが会社にとって重要ではないか?と思っているのが理由です。私自身が属人化した業務を多く抱えている立場上、どのような解消方法が適切であるか、判断基準や考える道筋を決めていきたいと考えています。
北山
自分がシステムの部署でRPAを推進する中で、業務の標準化の必要性を認識したのがきっかけです。RPAは「ロボット・プロセス・オートメーション」の頭文字をとった言葉で、定型業務を機械化・自動化してくれるツールを指します。自分の仕事が業務の標準化を推進する仕事であるのもあって、さらに広い視野で属人化の問題を捉えたいと思って参加しました。
岩佐
担当者不在時に、誰がその業務をカバーするのか分からない事態を避けるためにも、この課題について議論する必要があると感じています。一方で、いまの組織体制では属人化しないと運用上困る業務もあるとも思っており、様々な視点で「属人化」について議論をしたいです。
― 皆さん日々の業務の中で、属人化について考える契機があったのですね。まずは、新徳さんが話されていた「どのくらい業務が属人化しているのかを正しく認識」するところから始めたいと思います。実は以前に、皆さん主動で社内アンケートを実施いただいており、結果をもとに属人化業務を一覧化したのですよね?
岩佐
そうです。属人化している状態を、1つの業務に対して社員が2人以上対応できる体制が整っていない状態と定義し、該当する業務を他部署に協力してもらって洗い出しました。
新徳
洗い出した属人化業務は、担当者や発生頻度、属人化への対策状況が分かるよう一覧化しました。また、属人化することへの影響度が分かるように、マニュアルの有無やその業務が及ぼすお客様や売上への影響、外注・自動化等の対策が可能か否かもまとめています。
― こうしてみると、既に各部署内で属人化の対策が済んでいる業務も多いですね。課題意識を感じ、先んじてマニュアル化やアウトソースの検討が進んでいるように思います。一覧化された属人化業務をみて、皆さんはどのように感じられましたか?
北山
他部署の業務をまじまじと見る機会が少ないので、興味深かったです。システム部の観点でみると、一部の業務はシステムを導入し自動化できそうなところもありそうです。他部署の脱属人化にシステムが貢献できそうな部分もあるので、これを機に提案してみようかなと思いました。
新徳
影響度が分かるよう分類したことで、どの業務の属人化解消が優先なのか、明確になった点が良い点だと感じています。細かく洗い出しているので、属人化業務の数自体は70個近くありますが、すべてを同じように解消していくのは現実的に厳しい。重要度や緊急度が把握できるのは、今後の対策の優先順位がつけやすく、属人化解消に向けた取り組みを推進しやすいですね。
北山
よくみると、部署責任者のリーダーとしての業務も「社員が2人以上対応できる体制が整っていない」ものとして洗い出されていますが、ここは属人化業務としては不要かもしれません。業務の性質で属人化のパターン分けをして、それぞれに対策を立てていくのはどうでしょう?
特殊なスキルを要する業務は引き継ぎができない?
― 北山さんが言われたパターン分けは、面白い観点ですね!どのようなパターンがありそうですかね?
新徳
パターンとしてひとつ、特殊なスキルが必要であるが故に属人化してしまっている業務があると思います。実は社内で“新徳サポート”と呼ばれる業務があるのですが…。
― “新徳サポート”ですか?
新徳
“新徳サポート”は平たく言うと、Webの施策やECサイトの見せ方をシステム側からサポートする業務です。私が前職でWeb関連の仕事をしており、かなりマニアックな分野まで踏み込んでいましたので、そのときの経験や知識をもとにサポートをしています。ただ、専門的な知識が必要なサポートであるため、私以外ではサポートが難しい一面があります。
北山
それでいくと、システム部門のインフラ対応や内作のツール対応も、特殊なスキルを要するので、引継ぎが難しい面がありますね。
岩佐
特殊スキルが必要な属人化業務って、フロー化・マニュアル化は必要だけど、非定型業務で資料化できないものが多いですね。質を問わなければ可能かもしれませんが、仮にマニュアルがあってその通りやっても、スキルの有無により手も足も出ない状況に陥りそうな気がします。
― “新徳サポート”の内容が資料化されていても、専門的過ぎて、資料自体を読み解くのに数年かかりそうですもんね…。こういった業務の属人化に、どのような対策が効果的なのでしょう?
新徳
人を採用して解決するなら、同一系統スキルの人員を募集する、となりますよね。その他の方法としては、作業の代行ができるアウトソース先と提携できるよう体制を整える、とかでしょうか。各部門で特殊なスキルの業務が担当範囲にあれば、社内で推進しつつ、万一に備えてアウトソース先を探しておくのが必要かも。
北山
専門的な知識がないと困る部分を明確にしておき、また、その知識領域について頼れる先を確保しておく必要があると思います。実はシステム部署では直近、インフラ対応のアウトソース化を進めているんです。外部の専門家に対応してもらえれば、属人化の解消に加え、専門性の高い効果的な対応が期待できます。
岩佐
アウトソースと並行して、その人がいなくなった時の緊急体制を予め決めておくのも重要ですよね。課題意識をもって体制を構築しておくと、いざというときに立て直しがスピーディーに実現できます。
クリエイティブ業務の属人化をどう考えるか
岩佐
特殊なスキル、とは少し違うのですが、たとえば販促の企画立案やクリエイティブの具現化などの業務も「この人じゃないと作れない」ものがあると思うんです。
― 例えば新商品の企画をまとめたり、ランディングページのラフを作成したり…こういった業務でしょうか?
北山
クリエイティブ系で属人化している業務の状況を一覧化した資料で改めて確認すると、フロー化やマニュアル化が出来ているものが多いです。でも、立案や具現化の質が重視される中、高い水準に満たないと社内で業務を任せるというのが難しいため、属人化しているのではないかと思います。
新徳
代行でアウトソースしてはどうかと思ったのですが、これも難しい側面があります。当社の考え方や方針を強力に伝え、高い水準で連携・確認できる人が必要である中、アウトソース先から人選ができるのか…。
― クリエイティブMTG然り、通販ライティング講習会然り、ハーブ健康本舗はものづくりやライティングに対して並々ならぬこだわりがありますよね。かつ、全社員がスキルアップできるよう、レクチャーやマニュアル資料が既にたくさんあります。これは会社の特徴である一方で、スキルの度合いにより属人化する要因でもあるのかもしれません。
岩佐
この属人化を解消するには、ポテンシャルのある人員の採用と育成が必要だと思います。育成なので一朝一夕にはいかないとは思いますが、時間がかかることを認識し、根気よく進めていく。同時に、研修を受講するメンバーも、自身のスキルアップに向けて常に取り組む姿勢をもって、日々努力していくしかないのかなと。
― 重要なポイントですね。特殊スキルを要する属人化業務、高い水準を要する属人化業務…2種類出てきました。それ以外の属人化パターンもあるのでしょうか?
北山
あとはシンプルに、引継ぎや属人化解消は可能だけれど、まだ手がまわらずに対応できていない属人化業務もあります。こちらは各部門で、業務のフロー化やマニュアル化を順次進めるのが解決策だと思うんですが、どうですかね?
新徳
一覧で可視化し、かつ優先度がつけられるので、スケジュール引きがしやすいですよね。どうしても業務で忙しい部署が多いので、期日を決めて、業務とどう並行して脱属人化を推進するか、部署内ですり合わせていけば解消していくはずです。
岩佐
これちょっと思ったのですが、チャットやメールでの情報連携について見直すのが大事ではないでしょうか。
― 情報連携ですか?
岩佐
よく情報共有として、メールのCCに部署の責任者のみ宛先を追加して情報共有することがありますが、このフローは担当者が不在になったときに、すべての補てんが部署責任者に頼りきりになってしまうように感じます。
北山
担当者が不在のときに、部署内でどうフォローするのかを決めて、それをもとに情報共有をする仕組みができると、いざというときにも安心して対応ができますね。これもひとつの属人化対策だと思います。
会社の「属人化」に対し何をやっていく?
― 議論が進むにつれ、やるべきことが見えつつあるように感じます。このあたりでまとめのフェーズに入りましょう。流れを整理すると、まずアンケート結果から、現状の属人化具合が可視化されましたね。
岩佐
基本的に、各部署内で懸念が強い項目については、既に対策が出来ている傾向にあると感じました。しかしながら、解消が難しい、あるいは、人を増やさないと解消が難しい業務も存在するので、そこに対策を講じる必要があります。
― 解消が難しい業務として、「特殊なスキルを要する属人化業務」や「高い水準が求められる属人化業務」があることを話しました。これらを踏まえて、各部署で、また会社で、今後どのような対策をとるとよいでしょうか?
新徳
各部署がやるべきこととして、属人化した業務のフローを構築し、そのフローを可視化する取り組みを進める。そして、重要性や緊急性を加味して、優先度の高い案件からスケジュールを決め取り組んでいく。まずはここからスタートするとよいと考えています。
岩佐
フロー化と並行して、マニュアル化も進める必要があります。ハーブ健康本舗は商品詳細資料や企画マニュアルなど、いま時点で資料化が充実していますが、各部署の踏み込んだ内容で、マニュアル化が必要な分野も残っていると思います。新徳さんが話されたように、優先順位を明確にして進行していかないといけませんね。
北山
外部のパートナー企業に委託できる業務はアウトソースし、業務の圧迫具合を軽くしていくのも、並行して考えるべきかと思います。システム部も、改めてパートナー企業との連携体制を強固にしていくため、取り組みを進めていきます。
新徳
あとは、チャットやメールの情報共有先を確認の上、適切に連携し、担当者不在時にも対応していける体制もつくるのを進めていけるとよいですね。よい機会なので、自部署でも連携を見直してみようと思います。
― 部署単位で属人化を解消しつつ、会社単位で取り組んだ方がよいことも何かあるでしょうか?
岩佐
社員を採用するという話もありましたが、部署内のみで判断できる問題ではありません。組織の在り方を考えられるよう、部署の状況を会社や人事に共有する仕組みをつくってはどうでしょう。ハザードマップのようなものがあれば良いかもしれません。組織図内で誰が担当者のカバーをしているか、属人化の程度で危険視した方がよいところはどこか、可視化するイメージです。
北山
人員体制上、属人化のリスクが高い部署は赤く表示して、危ない!と分かる感じですかね?
岩佐
はい、可視化していれば、状況を即座に把握し検討ができるので、仕組みとして面白いですよね。
組織が前進し続けるために…
限られた時間でしたが、今回は「業務の属人化」をテーマに、社内でもテーマに関心が高かった3名に集まっていただいて、課題に対してのディスカッションを記事にしました。
少数精鋭で業務推進している組織では、人数規模的に属人化を避けることが難しいのも事実。また、高い専門スキルを要する業務には、マニュアル化・フォーマット化自体が困難なものもあります。
属人化対策の難しさも踏まえて、自分たちでどう変えていくと良いか、前向きな議論が展開されました!尚、今回の議論内容は、報告書の書面にまとめられ、会社に提出がなされています。
組織が前進し続けられるよう、引き続きフロー化やマニュアル化の取り組みを進めながら、属人化の課題に対して向きあっていきます。また記事にできればと思いますので、取り組みについては改めてご紹介をさせてください。
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執筆:住吉泰地(すみよしだいち)
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